
親の施設入居や相続をきっかけに使わなくなった実家など、空き家の処分に困っている方は多いのではないでしょうか。空き家を放置していると、防犯や老朽化のリスクに加え、固定資産税の負担が続くなどデメリットが大きいです。
そこで本記事では、空き家を売却する4つの方法と売却の流れ、注意点や節税に役立つ特例まで具体的に解説します。放置している空き家を安心して売却したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
空き家を売却する4つの方法
空き家を売却したいと考えても「どう進めればいいのかわからない」「どのような売却方法があるの?」と疑問を持っている方は多いです。空き家は築年数や管理状態によって価値が大きく変わり、物件の状況に合った売却方法を選ぶことが重要です。ここでは、代表的な4つの売却方法と、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
現状有姿で売却する
「現状有姿」とは、空き家を取り壊したりリフォームしたりせず、そのままの状態で買主に引き渡すことを指します。修繕などにかかる費用を抑えられるため、売主の負担が少なく済むのが魅力です。特に築年数が経過して修繕費用が高額になる場合や、管理負担を早く解消したい方に選ばれるケースが多いです。
ただし、建物の老朽化や設備の不具合がある場合は、買主にとって大きなリスク要因となり、売却価格は相場よりも下がりやすくなります。また、雨漏りや構造の不具合、シロアリ被害などを隠したまま売却すると後々トラブルに発展する恐れがあるため、現状の不具合については必ず伝えるようにしましょう。現状有姿の場合でも、売主として説明責任があることを理解しておく必要があります。
リフォーム済みで売却する
リフォームを行ってから売却する方法は、空き家の価値を高める手段の1つです。特に水回り設備の交換やクロスの貼り替え、外壁の補修などを行うことで、購入検討者の印象が良くなり早期売却につながります。
一方で、当然ながらリフォームには費用が発生するため、その金額を売却益で回収できるかが重要な判断ポイントです。高額な改修をしたにもかかわらず、周辺の相場より高く売れなければ結果的に損失になります。
築古の物件であっても、最低限の改修にとどめて「住める状態」に整えるだけで十分なケースもあります。地域の需要や購入者層を踏まえて、リフォームの内容や金額を検討することが大切です。
解体し更地として売却する
老朽化が激しく、居住用として再利用が難しい場合は、建物を解体して更地にしてから売却する方法も有効な選択肢となります。更地にすると購入者が自由に新しい家を建てられるため、活用の幅が広がることで、買い手が見つかりやすくなる傾向があります。特に立地の良い土地であれば、更地としての需要がある場合もあり、スムーズな売却につながる可能性があるでしょう。
ただし、解体には木造住宅で100〜150万円程度の費用がかかり、さらに建物がなくなることで固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が高くなる点は理解しておく必要があります。
解体後すぐに売却が決まれば問題ありませんが、売れ残ってしまうと管理や税金の負担が大きくなるリスクも考慮しましょう。地域の需要や土地の相場をきちんと確認し、解体後の売却計画を立ててから実行するのがおすすめです。
買取業者に売却する
不動産会社や専門の買取業者に、直接売却する方法も有効な選択肢です。買主を探す必要がないため、スピーディーに手放したい事情がある場合に適しています。内覧の準備も必要ないため、精神的な負担を軽減できるのも大きなメリットです。
ただし、買取業者はその後の再販売を前提としているため、売却価格は相場より安くなる傾向があります。一方で、売却後の残置物処理や修繕対応を業者が担ってくれるケースが多く、安心して取引できるのは大きな魅力です。特に「急いで現金化したい」「相続で取得した空き家をすぐに整理したい」という方には、買取業者への売却を選ぶ価値があるでしょう。
空き家を売却する流れを解説
空き家の売却手順は通常の不動産売却の流れと大きく変わりませんが、空き家特有の注意点や手間が発生する場面があります。以下5つの手順を参考に、事前準備を進めましょう。
- 不動産会社に査定依頼をする
- 媒介契約を締結し売却の依頼を行う
- 物件の販売活動を開始する
- 売買契約を締結する
- 決済・引き渡しを行う
本章では、ステップごとの詳細を解説します。
STEP1. 不動産会社に査定依頼をする
まずは空き家の価値を把握するため、不動産会社に査定を依頼します。築年数や立地、現状の管理状態を踏まえて市場価格を見積もってもらうことで、おおよその売却価格の目安を掴めます。空き家の場合は、周辺の取引事例などから価格を算出する簡易査定だけでなく、訪問査定で詳細にチェックしてもらうと安心です。
特に長期間空き家だった場合は、雨漏りや構造の劣化が進んでいるケースがあります。売却に影響する要素を、しっかりと確認しておきましょう。不動産会社を選ぶ際は、査定額だけでなく、担当者の対応や提案力も比較して判断することで、その後の売却活動の進めやすさが変わってきます。
STEP2. 媒介契約を締結し売却の依頼を行う
査定の結果や不動産会社の提案内容に納得できたら、次は正式に売却を依頼する媒介契約を締結します。媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があり、それぞれ他社への売却依頼の可否や自己発見取引の可否、報告義務の有無などが大きく異なります。特に空き家は売却期間が長引くことも多いため、自身の考えに合った契約形態を選ぶことが大切です。
媒介契約の種類ごとの特徴は、以下の表のとおりです。
比較項目 |
一般媒介契約 |
専任媒介契約 |
専属専任媒介契約 |
他業者への仲介依頼 |
可能 |
不可 |
不可 |
自己発見取引(自分で買主を見つけた場合の直接契約) |
可能 |
可能 |
不可 |
募集状況の報告 |
なし |
2週間に1回以上 |
1週間に1回以上 |
レインズへの登録期限 |
登録義務なし |
契約締結後7営業日以内 |
契約締結後5営業日以内 |
契約期間の上限 |
制限なし |
3ヶ月以内 |
3ヶ月以内 |
それぞれの特徴を比較したうえで、販売戦略に合わせて媒介契約の種類を選択しましょう。媒介契約書は今後の売却活動における重要な取り決めとなるため、内容をよく理解して疑問点があれば、締結前に不動産会社へ確認しておくことをおすすめします。
STEP3. 物件の販売活動を開始する
媒介契約が整ったら、いよいよ販売活動のスタートです。購入希望者に物件を魅力的にアピールするために、不動産会社はインターネット広告やチラシなどを使って募集を行います。問い合わせがあれば内覧対応も必要になりますが、空き家の場合は清掃や換気、水道・電気の通電確認など、普段使っていない住宅ならではの準備をしておくことが大切です。
また、防犯面でも鍵の管理や雨戸の開閉、庭木の手入れなどの対策が求められます。販売中の物件に悪印象を与えないよう、見学時にはできる限り部屋をきれいに整え、良好な管理状態をアピールしましょう。
STEP4. 売買契約を締結する
購入希望者との交渉がまとまり、条件に合意できたら売買契約を締結します。契約時には重要事項説明を行い、売主と買主の双方が納得の上で手続きを進める流れです。手付金の受け取りや契約解除の条件などもここで定められるため、後々のトラブルを避けるためにも細かい部分まで理解しておくことが必要です。
空き家の売却においては、過去の修繕履歴や現状の不具合についてきちんと説明することが非常に重要です。引き渡し後に「話が違う」とトラブルになるのを防ぐためにも、わかっている情報はできる限り開示し、安心して買主に引き渡せる状態を整えましょう。
STEP5. 決済・引き渡しを行う
売買契約後、買主からの残代金を受け取り、所有権移転登記や鍵の引き渡しを行います。これで正式に売却が完了です。金融機関を利用する場合は住宅ローンの決済に合わせて司法書士などが登記を行うケースが多く、当日の流れをしっかり確認しておくと安心です。
空き家の決済・引き渡しにおいては、残置物の処分や電気・水道の解約など「誰も住んでいない物件」ならではの最終的な対応も重要です。トラブルを避けるためにも、決済日までに室内や敷地をきれいにしておくことをおすすめします。
空き家の売却で気をつけたい3つの注意点
空き家の売却は通常の不動産売却とほぼ同じ手順で進められますが、空き家特有のリスクやトラブルが潜んでいる点には十分注意が必要です。ここでは、空き家の売却で特に気をつけたいポイントを3つ紹介します。
権利関係や境界に不備があると売却が遅れる
空き家を売却する際に、最も大きな障壁となるのが権利関係や土地の境界に関する問題です。例えば、以下のようなケースは注意が必要です。
- 相続登記が済んでいない
- 所有者が複数人で共有になっている
- 隣地との境界がはっきりしていない
境界の越境や未確定部分があれば、売却前に測量や隣地所有者との立ち会いを行い、トラブルを未然に防ぐ必要があります。
また、相続登記が未了だと法律上そもそも売却できないため、速やかに手続きを済ませることが大前提です。登記や名義変更については司法書士など専門家に相談し、必要書類を早めにそろえておくと売却活動をスムーズに進められます。
建物の劣化・管理不全により売却価格が下がる可能性がある
空き家は長期間人が住んでいないことで傷みやすく、売却時にマイナス評価を受けやすい傾向にあります。雨漏りやシロアリ被害、カビの発生などは放置期間が長いほど深刻化しやすく、修繕に多額の費用がかかるケースもあります。室内や外観の状態が悪いと内覧時に悪い印象を与え、価格交渉で大幅に減額されるリスクがあるため注意が必要です。
売却活動を始める前に、最低限の清掃・換気を行い、庭木の剪定や雑草の除去なども含めて「管理されている空き家」であることをアピールすることが重要です。少し手をかけるだけで印象が大きく変わるため、結果的に売却価格の維持につながります。
不動産会社に相談して適切な売却戦略を立てることが重要
空き家の売却では、どの方法で売るかによって必要な期間やコストが大きく変わります。「現状有姿で売却するのか」「リフォームしてから売るのか」「あるいは解体して更地にして売るのか」それぞれにメリット・デメリットがあり、自分だけで判断するのは難しいケースが多いです。
だからこそ、空き家売却に詳しい不動産会社へ早めに相談し、立地や築年数に合わせた最適な販売戦略を提案してもらうのがおすすめです。複数の選択肢を比較検討し、自分の希望や状況に合った計画を立てることで、後悔のない売却が実現しやすくなります。
空き家の売却時に発生する3つの税金
空き家を売却する際には、思わぬ税金負担が発生することがあります。特に相続した空き家の場合は税金の計算も複雑になりがちのため、早めに確認しておくと安心です。ここでは、空き家の売却で押さえておきたい3つの税金について、基礎的な内容を解説します。
印紙税
印紙税は、売買契約書を作成する際に必要となる税金です。契約金額に応じて課税され、原則として契約書に印紙を貼付して納付します。令和9年3月31日までの間に作成された不動産売買契約書については軽減措置が適用されるため、本則税率より負担を抑えられる点は覚えておきましょう。
契約金額ごとの印紙税は、以下のとおりです。
契約金額 |
本則税率 |
軽減後の税率 |
500万円超 |
1万円 |
5千円 |
1,000万円超 |
2万円 |
1万円 |
5,000万円超 1億円以下 |
6万円 |
3万円 |
例えば、1,000万円超の売買契約であれば、本来2万円のところ軽減税率で1万円に収まります。
また、最近は電子契約を導入する不動産会社も増えており、この場合は印紙税が非課税扱いになります。どの方法で契約するかによって負担が変わるため、売却前に確認しておきましょう。
参照元:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
登録免許税
登録免許税は、売買や担保抹消などの登記手続きで必要になる税金です。空き家の売却では、抵当権の抹消登記を行う際に不動産1件につき1,000円(2筆なら2,000円)の登録免許税がかかります。
抵当権抹消や相続に伴う名義変更などは、司法書士に依頼するのが一般的です。その場合、司法書士への報酬として別途1~2万円程度かかることを見込んでおきましょう。
譲渡所得税
譲渡所得税は、空き家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合に課税される税金です。取得費や譲渡費用を差し引いた金額に対して課税され、所有期間によって税率が変わります。所有期間ごとの税率は、以下のとおりです。
項目 |
長期譲渡所得 |
短期譲渡所得 |
所有期間 |
5年超 |
5年以下 |
税率 |
20.315% (所得税:15.315% 住民税:5%) ※所得税には2.1%の復興特別所得税を含む |
39.63% (所得税:30.63% 住民税:9%) ※所得税には2.1%の復興特別所得税を含む |
5年を超えて所有していれば「長期譲渡所得」として20.315%(所得税15.315%+住民税5%)、5年以下の「短期譲渡所得」だと39.63%(所得税30.63%+住民税9%)と大きな差があるため注意が必要です。
空き家の場合、相続で取得した物件などは所有期間の起算点をどうみるかで計算が変わることもあるため、事前に税理士へ相談しましょう。
参照元:No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)国税庁
空き家を売却する際に活用したい2つの特例
空き家の売却においては、高額な譲渡所得税が発生するケースも少なくありません。しかし一定の条件を満たせば、負担を大きく減らせる制度が用意されています。ここでは、代表的な2つの特例を紹介します。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
相続で取得した空き家については、条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。被相続人が一人暮らしだったことや、売却までに第三者に貸していないことなどが主な条件です。譲渡所得税を大幅に軽減、あるいはゼロにできる可能性があるため、相続した空き家を売却するなら必ず確認しておきたい制度です。
さらに、この特例には期限があり、空き家になってから3年を経過する年の12月31日までに売却する必要があります。スケジュール管理も大切ですので、早めに売却計画を立て、必ず税務署や税理士へ相談して進めましょう。
参照元:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
もう1つ活用できるのが、マイホームを売却したときに譲渡所得税率を軽減できる特例です。所有期間が10年を超えるマイホームであれば、譲渡所得税率が通常20.315%のところ、14.21%に抑えられます。空き家であっても売主が住んでいた期間があり、一定の条件を満たせば適用可能となる場合があります。
なお、この軽減税率の特例も条件の確認が必要です。売却後に「適用できると思っていたのに使えなかった」といったトラブルを避けるためにも、不動産会社や税理士に相談してから進めると安心です。
参照元:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
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空き家の売却には、相続登記の問題や税金、解体の検討などさまざまな課題がつきものです。松屋不動産販売株式会社では、地域に密着したきめ細やかな対応で、売却後のサポートまで丁寧に行っています。相続や税金に関するご相談はもちろん、解体や片付けのご相談まで一括でお任せいただけるのが強みです。
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まとめ:空き家を売却する際の流れを理解してスムーズな売却を実現しよう
空き家の売却は、現状売却・リフォーム売却・解体売却などの方法選びから、媒介契約や税金の手続きまで非常に多くの判断が必要になります。さらに、相続登記の未了や建物の劣化といった空き家特有の課題にも注意しなければなりません。このような複雑な手続きを一人で進めるのは非常に難しく、不安も大きいでしょう。
そのため自分に合った売却方法を選び、地域事情にも詳しく実績豊富な不動産会社にサポートを依頼することが、後悔しない売却のポイントです。少しでも迷いがある方は、ぜひ松屋不動産販売へご相談ください。相続や税金の相談も含めてワンストップで支援しますので、きっと安心して空き家売却に踏み出せるはずです。