
マンションの売却においては、通常、売却益が出た場合に税金が発生します。ただし、一定の条件を満たすことで売却益に税金がかからないケースもあります。なかには制度を知らなかったことで、必要以上に多額の税金を納めてしまったという方も少なくありません。
本記事では、マンション売却時に発生する3つの税金と、税負担を軽減できる特例・控除法を分かりやすく解説します。知らないことで損をしないために、譲渡所得税の仕組みや節税のコツを押さえて、納得できる売却を実現しましょう。
目次
マンションの売却にかかる3つの税金
マンションを売却する際には、利益の有無にかかわらず一定の税金が発生します。誰がどのタイミングで、どのように負担するのかを理解しておくことが大切です。ここでは、売却時に発生する3つの主な税金について、仕組みや目安となる金額を解説します。
登録免許税
登録免許税とは、不動産の登記手続きを行う際にかかる国の税金です。マンションを売却する際、売主が負担することになるのが「抵当権抹消登記」にかかる登録免許税です。抵当権とは、住宅ローンを借りた際に金融機関が物件に設定する権利のことで、ローン完済後はこれを正式に抹消しなければなりません。抵当権の抹消は、売却代金で住宅ローンを完済した後、所有権移転登記と同時に行われるのが一般的です。
抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、1件につき1,000円の定額です。土地が複数筆に分かれている場合は、それぞれに課税されます。
登記手続きは専門的であるため、多くの売主は司法書士に依頼することになります。依頼に際し発生する司法書士の報酬は、1〜2万円前後が相場です。
登録免許税そのものは少額でも、司法書士への報酬を含めるとトータルで数万円の出費になるケースもあります。これらの費用は原則として売主が負担するものとされているため、売却を見据えた資金計画や司法書士の選定など、事前に把握・準備しておくことが、スムーズな手続きにつながるでしょう。
印紙税
印紙税は、売買契約書などの「課税文書」を作成した際に課される税金です。不動産売買では、契約金額に応じた収入印紙を契約書に貼付し、消印を行うことにより納税します。例えば3,000万円のマンションを売却する際には、軽減措置の適用により印紙税額は1万円となります(通常は2万円)。この軽減措置は、令和9年3月31日までに作成される契約書が対象です。
契約金額 |
本則税率 |
軽減後の税率 |
500万円超 |
1万円 |
5千円 |
1,000万円超 |
2万円 |
1万円 |
5,000万円超 1億円以下 |
6万円 |
3万円 |
売買契約書は通常2通作成し、売主・買主が1通ずつ保管するため、印紙税もそれぞれが負担するのが基本です。ただし、買主が宅建業者である場合には、契約書を1通のみ作成し、売主が原本を保管し、買主はその写しを保管する形式がとられるケースがあります。
この場合は、原本を保管する側(多くは売主)が印紙税を全額負担するのが実務上の慣例となっています。事前に費用負担について確認しておくことで、トラブル防止につながるでしょう。
参照元:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
譲渡所得税
譲渡所得税は、マンションの売却によって利益が出た場合にかかる税金で、所得税・住民税・復興特別所得税を含む形で課されます。利益が出ない場合は課税されませんが「売却価格-(取得費+譲渡費用)」でプラスとなった部分(譲渡益)がある場合には、その額に応じて税金が発生します。また譲渡所得税は、保有期間によって税率が大きく異なるため注意が必要です。
項目 |
長期譲渡所得 |
短期譲渡所得 |
所有期間 |
5年超 |
5年以下 |
税率 |
20.315% (所得税:15.315% 住民税:5%) ※所得税には2.1%の復興特別所得税を含む |
39.63% (所得税:30.63% 住民税:9%) ※所得税には2.1%の復興特別所得税を含む |
例えば、相続後すぐに売却した場合は「短期譲渡所得」扱いとなり、所得税と住民税を合わせて39.63%の税率が適用されます。一方で、所有期間が5年を超えてから売却した場合は「長期譲渡所得」となるため、20.315%と比較的低い税率の適用となります。
マンション売却で税金がかからない3つのケース
マンションを売却しても、すべてのケースで税金が発生するわけではありません。売却によって得た利益(譲渡所得)が一定の条件を満たせば、税金がかからない、もしくは大幅に軽減される制度が設けられています。ここでは、マンション売却において現実的に適用される税金がかからない3つのケースを紹介します。
取得費や譲渡費用の計算で利益が出ない場合
譲渡所得税は、あくまで「譲渡益(売却によって得た利益)」に対して課税されます。したがって、マンションの売却価格が「取得費+譲渡費用」よりも低ければ、譲渡所得がゼロとなり税金は発生しません。購入金額をベースとした取得費と、売却活動に伴って支出した諸費用を正確に把握することが重要です。
具体的には、取得費に含まれるのは以下のような費用です。
- 購入時の本体価格
- 仲介手数料(購入時)
- 登記費用
- リフォーム費
- 不動産取得税・印紙代
また、譲渡費用には次のような項目が該当します。
- 仲介手数料(売却時)
- 印紙税
- 立退料
- 測量費
- 解体費用
これらを正確に計上して、税金の払い過ぎを防ぎましょう。
「相続税の取得費加算の特例」を適用できる場合
マンションを相続した後に売却した場合、取得費が不明なことも多く、譲渡所得が高額に算出されてしまいがちです。そのようなケースで活用できるのが「相続税の取得費加算の特例」です。この制度では、相続税の申告期限から3年以内に売却すれば相続税の一部を取得費に加算できるため、譲渡益を大きく減らすことができます。
例えば、相続によって取得したマンションを3年以内に売却した場合、相続時に支払った相続税がある程度の額に達していれば、その金額を取得費に加算できる制度です。この制度の適用により課税対象の譲渡所得がゼロ、または軽減できる可能性があります。この特例を適用するには「相続税を納税していること」「売却する物件が相続財産であること」といった要件を満たす必要があり、確定申告時には証明書類の提出も求められます。
参照元:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁
マイホームの売却で「3,000万円特別控除」が使える場合(居住用財産)
売却時に広く使われている非課税制度の1つが「マイホームの売却時に使える3,000万円特別控除」です。この制度は、自ら住んでいた居住用マンションを売却した場合に限り、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。適用される場合、売却益が3,000万円以下のケースにおいては、譲渡所得税がかからずに済みます。
適用条件としては、以下のような点を満たす必要があります。
- 売却物件が居住用であり、事業用や別荘などで使用していないこと
- 売却先が親や配偶者などの近しい関係でないこと
- 転居してから3年を経過する日の属する日の12月31日までの売却であること
- 家屋を取り壊した場合、1年以内に譲渡契約を結ぶこと
- 同様の控除を売った年の前年もしくは前々年に受けていないこと
譲渡所得が3,000万円を超える場合には、控除を差し引いた超過分に対して課税されます。また、過去に同じ控除を適用していると使えないケースもあるため、売却前に条件を確認しておきましょう。
参照元:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁
マンション売却の税金を軽減する3つのコツ
マンションを売却する際、譲渡所得税がネックになると感じる方も多いのではないでしょうか。特に売却益が大きい場合や所有期間が短い場合は、税額が高額になるケースもあります。しかし、一定の条件を満たすことにより税額を大幅に減らせる制度も存在します。ここでは、税金の負担を軽減するために知っておきたい3つのコツを紹介します。
居住用財産の買換え特例を利用する
マンションを売却し、その年の前年1月1日から翌年12月31日までの間に新たなマイホームを取得して居住する場合に利用できるのが「居住用財産の買換え特例」です。この制度を活用すれば、売却によって生じた譲渡益に対する課税を一時的に繰り延べることができ、税金の支払いは買い換えた住宅を将来売却した際に精算されます。
納税が先送りされることで、本来税金として支払うはずだった資金を次の住まいの取得費用に充てられるのが大きなメリットです。特に、住み替えのタイミングで資金に余裕を持たせたい方にとって、有効な選択肢となるでしょう。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 自分が住んでいる家であること
- 居住期間が10年を超えていること
- 買い換えたマイホームは日本国内であること
- 売った年の前年から翌年までにマイホームを買い換えること
- 売却価格が1億円以下であること
- 買い換えた住宅が50㎡以上の居住用物件であること
- 売却先が親や配偶者などの近しい関係でないこと
などが求められます。また、この制度はあくまで「課税の繰り延べ」に過ぎず、将来的に新しい住宅を売却する際に、本来の税金が精算される点に注意が必要です。制度の内容を十分理解した上で活用しましょう。
参照元:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁
マンションの所有期間が5年経過してから売却する
不動産の譲渡所得税では「所有期間が5年を超えているか」によって、適用される税率が大きく異なります。具体的には、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は約39.63%と非常に高い水準です。
一方で、5年を超えてから売却した場合は「長期譲渡所得」として扱われ、税率は約20.315%に抑えられます。その差はおよそ2倍にのぼり、売却時期を数ヶ月調整するだけで数十万円以上の節税につながることも珍しくありません。
なお、所有期間の判定は「取得した日からちょうど5年」ではなく「取得した翌日から、売却する年の1月1日時点までの期間」でカウントされます。例えば、2019年3月に購入した場合は、2025年1月1日を迎えて初めて「5年超」と見なされる仕組みです。
これらのルールを理解した上で売却のタイミングを調整すれば、特別な手続きをせずに節税効果を得られる点でも、この方法は非常に有効と言えるでしょう。
譲渡損失の損益通算および繰越控除の適用
マンションの売却時に赤字が出てしまった場合でも、税金の面で活かせる方法があります。それが「損益通算」と「繰越控除」の制度です。売却による譲渡損失(赤字)を、給与所得や事業所得などの他の所得と相殺(通算)することができるため、全体としての課税所得が減少し、所得税や住民税の軽減につながります。
さらに、通算しきれなかった損失は、翌年以降に最長3年間繰り越して控除が可能です。この制度は、マイホーム売却で一定の住宅ローンが残っていることなどの条件を満たせば適用できるため、購入時の借入額が多かったケースでは特に有効です。
赤字で終わってしまう売却であっても、確定申告を通じて還付や税額軽減のメリットを受け取れる可能性があります。
参照元:No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
松屋不動産販売はマンション売却時の税金についてもサポートします
松屋不動産販売株式会社では、マンションの売却価格だけでなく、税制優遇の適用可能性まで見据えたご提案を行っています。「税金のことはよくわからない」「できるだけ損をせずに売却したい」といったお悩みに対しても、不動産と税務の知識を備えたスタッフが丁寧に対応いたします。
譲渡所得税に関する特例や控除制度は、適用できるかを知っているか否かで納税額に大きな差が出る場合も珍しくありません。複数の制度が複雑に絡むこともあるため「自分のケースに合う制度を知りたい」「確定申告が不安」と感じた段階で早めにご相談いただくことをおすすめします。
売却後の税務手続きも含めて、初めての方でも安心して進められるようサポート体制を整えています。マンションの売却をお考えの方は、ぜひ一度松屋不動産販売までご相談ください。
まとめ:税金がかからないマンション売却は事前準備と専門家への相談が鍵を握る
マンションを売却する際に発生する税金は「利益が出たら必ずかかるもの」と思われがちですが、実際には制度の活用次第で税負担をゼロにできるケースも多いです。3,000万円特別控除や取得費加算の特例、所有期間による税率の違いなど、知っているだけで結果が大きく変わる制度が多く存在します。
とはいえ、どの制度が使えるのかは個々の状況によって異なるため、早めの情報収集と専門家への相談が非常に重要です。誤った判断で本来受けられる控除を逃してしまえば、数十万円単位で損をすることもあります。
「税金のことが不安」「確定申告までしっかり対応したい」と感じている方は、不動産売却の経験が豊富で税制にも詳しい松屋不動産販売にお任せください。納得のいくマンション売却を実現するためにも、制度と選択肢を正しく理解し、自分に合った戦略を立てましょう。