
土地の売却は戸建てやマンションの売却と異なり、税金や契約手続きなど専門的な知識が求められる場面が多くあります。「使わない土地を売りたいけど、何から始めればいいのか分からない」といった不安を抱えている方は、多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、初めて土地を売却する方でも安心して進められるように、7つの手順に沿って流れを詳しく解説します。さらに、売却時にかかる費用や注意点もまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
土地売却の流れ【7ステップ】
土地を売却する際は、不動産会社への査定依頼や売買契約、決済・引き渡しなど、いくつかの段階を経て進めることが必要です。ここでは、土地売却の全体像を7つのステップに分けて解説します。初めて土地を売る方でもスムーズに対応できるよう、それぞれのポイントを押さえておきましょう。
事前準備と情報収集
土地売却の第一歩は、現状の確認と情報収集から始まります。特に重要なのが、土地の境界線や権利関係の把握です。境界が曖昧なまま売却を進めると、後々トラブルに発展する可能性があります。必要に応じて測量士に依頼し、正確な境界を明示しておくことが大切です。
次に、近隣の取引事例や地価の調査を行い、相場感をつかみましょう。国土交通省の「不動産取引価格情報検索」や、国税庁の「路線価図」などの公的データを活用することで、対象エリアの価格帯を把握することが可能です。
あわせて、自身の売却目的を明確にしておくことも重要です。土地売却の目的は、以下のようにさまざまです。
- 住み替え
- 資産の組み替え
- 相続した土地の整理
- 生活費・事業資金の確保
- 不要な空き地・遊休地の処分
- 固定資産税や管理手間の軽減
目的がはっきりすることで、売却時期や価格の優先順位も定まり、より効果的な戦略を立てやすくなるでしょう。
参照元:不動産情報ライブラリ|国土交通省
参照元:路線価図・評価倍率表|国税庁
不動産会社選び・査定依頼
次のステップは、不動産会社への査定依頼です。複数の会社に査定を依頼することで、それぞれの対応力や提案内容、提示された価格の妥当性を比較しましょう。特に、地域に根差した不動産会社は地元の需要や相場に精通しており、そのエリアの特性を踏まえた的確な売却戦略を立ててくれるため、安心して任せられます。
なお、査定価格はあくまで「想定される売却価格」であり、確実にその金額で売れるという保証ではありません。売主としては「すぐに現金化したい」「時間をかけて高く売りたい」といった希望を明確に伝えることが重要です。目的に応じた販売方針を不動産会社と共有することで、より実現性の高い提案を受けられるでしょう。
媒介契約の締結
査定を依頼した不動産会社の中から信頼できる1社を選び、媒介契約を結びます。媒介契約には、以下の3種類があります。
項目 |
一般媒介契約 |
専任媒介契約 |
専属専任媒介契約 |
他業者への仲介依頼 |
可能 |
不可 |
不可 |
自己発見取引(自分で買主を見つけた場合の直接契約) |
可能 |
可能 |
不可 |
募集状況の報告 |
なし |
2週間に1回以上 |
1週間に1回以上 |
レインズへの登録期限 |
登録義務なし |
契約締結後7営業日以内 |
契約締結後5営業日以内 |
契約期間の上限 |
制限なし |
3ヶ月以内 |
3ヶ月以内 |
契約時には募集方法や報告義務、有効期間の確認を忘れずに行いましょう。特に「できるだけ早く売りたい」「チラシやポータルサイトで広く広告を出して欲しい」「近所には知られずに売却したい」といった要望がある場合、それらに柔軟に対応できるかが重要な判断材料となります。
売却活動・見学対応
媒介契約を締結した後は、売却活動が始まります。不動産会社がインターネットへの物件掲載やチラシ、現地看板などを使って購入希望者を募ります。売却活動中は、見学希望が入ることもあります。土地に草木が生い茂っている、ゴミが散乱しているといった状況では印象が悪くなるため、清掃や除草などの簡単なメンテナンスも行っておきましょう。
反響があった際は、不動産会社との情報共有が大切です。「どのような問い合わせがあったか」「見学者の反応はどうだったか」を確認しながら、必要に応じて販売方法や価格の見直しを検討します。
買付申込み・売買契約
購入希望者が現れると「買付申込書(購入申込書)」が提出されます。買付申込書に記載されている主な項目は以下のとおりです。
- 購入希望価格
- 引き渡し時期
- 手付金の額
- 支払方法(現金一括・住宅ローンの有無など)
- 物件概要(所在地、面積など)
- 買付申込書の有効期間
- 仲介業者の情報・担当者
売主は買付申込書の内容をもとに条件の調整や価格交渉を行います。買付申込書は法的拘束力のある書面ではありませんが、正式な売買契約に進むかを判断する重要な資料です。不明点がある場合は、不動産会社と相談しながら慎重に対応しましょう。
条件に合意できたら、正式な売買契約を締結します。契約時には買主から手付金(売買価格の5〜10%程度)を受け取り、売買契約書に署名・押印を行います。
売買契約書には、主に以下の内容が記載されています。
- 売買の対象物件(所在・地番・面積など)
- 売買代金および支払方法(手付金・残代金の内訳や支払時期)
- 所有権移転の時期および方法
- 引き渡しの条件・期日(現況渡しか、更地渡しかなど)
- 契約不適合責任の範囲と期間(旧:瑕疵担保責任)
- 設備の有無と引き渡し状況(上水道・下水・ガスなど)
- 公租公課の精算方法(固定資産税・都市計画税の按分)
- 違約金・契約解除の条件(手付解除や履行遅延など)
- ローン特約(住宅ローンが不成立の場合の解除条項)
- 境界や越境に関する特約(境界明示の有無、未確定時の扱い)
- 登記費用や諸経費の負担者(登記申請・司法書士報酬など)
- 仲介手数料の金額および支払いタイミング
売買契約書には重要な条項が記載されているため、内容をよく確認して納得したうえで締結することが大切です。後のトラブルを防ぐためにも、曖昧なまま契約を進めないよう注意しましょう。
決済・引き渡し
売買契約が締結されたあとは、決済と土地の引き渡しに進みます。決済は通常、買主の金融機関や不動産会社の応接室などで行われ、売主・買主・司法書士・仲介業者が同席するのが一般的です。この場で買主から残代金が支払われ、司法書士が所有権移転登記の手続きを進めます。登記申請が完了すれば、土地の所有権は正式に買主へと移転されます。
売主は、残代金の受領と同時に必要書類を引き渡します。古家付きの土地であれば、建物の鍵や備品も一緒に渡すのが基本です。また抵当権が設定されている場合は、同時に抹消登記の手続きも行います。スムーズな決済のためには、事前に司法書士や不動産会社としっかり準備を進めておき、当日に慌てることのないよう手続きの流れを確認しておくことが重要です。
翌年の確定申告
土地を売却し譲渡益(売却益)が出た場合は、翌年の2月16日〜3月15日までの間に確定申告が必要です。売却価格から取得費や諸経費を差し引いた利益がある場合は、譲渡所得税の対象となります。この申告には売買契約書や登記簿謄本、取得時の各領収書などが必要になります。申告をスムーズに行うためにも、必要書類は保管しておくことが大切です。
また「3,000万円の特別控除」や「取得費加算の特例」などの節税制度もあります。自身が該当するかを確認し、必要に応じて不動産会社や税理士に相談しましょう。
土地売却で発生する4つの費用
土地の売却においては単に売って利益を得るだけではなく、さまざまな費用が発生します。売却価格からこれらの費用が差し引かれるため、手取り額を把握するうえでも正確な知識が必要です。ここでは、主に発生する4つの費用について解説します。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社に支払う「成功報酬」のことです。売買契約が成立した場合にのみ発生し、その上限は法律で定められています。具体的には、売却価格によって以下のように異なります。
売却価格 |
仲介手数料の上限 |
400万円超 |
売却価格の3% +6万円 +消費税 |
200〜400万円以下 |
売却価格の4% +2万円 +消費税 |
200万円以下 |
売却価格の5% +消費税 |
例えば、1,000万円で土地を売却した場合、仲介手数料の上限は「1,000万円 × 3% + 6万円 = 36万円(税別)」となります。仲介手数料は売却活動全般に対する報酬であり、価格査定や広告、見学対応、契約書作成などを含むトータルサポートに対する対価と言えるでしょう。
測量費
土地の境界があいまいな場合や、隣地とのトラブルが懸念される場合には、売却前に測量を行うことが望まれます。測量には主に2種類あり、それぞれ費用や精度が異なります。
簡易測量(現況測量):図面作成と境界目視により現状を示すもので、費用は10〜30万円程度。
確定測量:隣接地所有者の立ち会いや合意を取り付け、公的に境界を明示する測量。費用は50~100万円前後になることもあります。
確定測量を行うことで買主の安心材料となり、売却がスムーズに進む可能性が高まります。
古家の解体費
古家付きの土地を売却する場合、解体して「更地」にするか「現状渡し」で売却するかを選択します。更地にする場合は解体工事が必要になり、木造住宅であっても100万円以上、鉄骨造・鉄筋コンクリート造であれば200万円以上かかるケースもあります。
なお、解体費用を誰が負担するかは取引条件次第ですが、事前に明示しておかないとトラブルになる恐れがあります。「売主負担で更地にして引き渡す」「現況のまま買主が解体費を負担する」など、契約書で明確にしておきましょう。
ローン返済手数料
土地に住宅ローンの残債が残っている場合、売却にあたってはローンを全額返済する必要があります。通常は、売却代金を充てて繰り上げ返済を行いますが、場合によっては繰り上げ返済手数料が発生します。手続き方法によって費用は異なり、店舗での手続きでは1〜3万円程度、インターネット経由であれば無料または数千円程度に抑えられることもあります。
売却金額がローン残高を下回る場合は、不足分を自己資金で補う必要があるため、事前に返済計画を立てておくことが大切です。さらに、ローン完済後には抵当権を抹消するための登記手続きが必要です。抵当権が付いたままでは、買主へ所有権を移転することができないため、この手続きは必須となります。
抵当権抹消の登記は司法書士に依頼するのが一般的で、司法書士報酬も含めて1〜2万円前後の費用を見込んでおくとよいでしょう。売却に関わるこれらの付随費用は、意外と見落とされやすいため、早めに不動産会社や金融機関に確認し、全体の資金計画に組み込んでおくことをおすすめします。
土地売却で発生する3つの税金
土地を売却すると、その取引に関連して税金が発生する場合があります。なかには契約時に納付するものや、売却後に確定申告を通じて納めるものもあるため、タイミングと金額の把握が重要です。ここでは、土地売却に関係する代表的な3つの税金について紹介します。
登録免許税
登録免許税は、不動産に関する登記を行う際にかかる税金で、土地売却においては主に「抵当権の抹消登記」に関連して発生します。住宅ローン付きの土地を売却する場合、売主側でローンを完済し、登記上の抵当権を抹消する必要があります。抵当権抹消にかかる登録免許税は不動産1件につき1,000円が課税され、土地が複数筆に分かれている場合は、それぞれに課税される点に注意が必要です。
この手続きは、通常司法書士に依頼して行います。司法書士への報酬は登記の内容や地域によって異なりますが、おおよそ1~2万円前後が目安です。なお、土地売却にともなう「所有権移転登記」の登録免許税については、原則として買主側が負担するのが一般的です。自身が負担すべき範囲を事前に整理し、費用を見込んでおくことが重要です。
印紙税
土地の売買契約書を交わす際には、収入印紙を貼付する必要があります。印紙税は契約金額に応じて金額が異なります。令和9年3月31日まで軽減措置が実施されており、税額は以下のとおりです。
契約金額 |
本則税率 |
軽減後の税率 |
500万円超 |
1万円 |
5千円 |
1,000万円超 |
2万円 |
1万円 |
5000万円超 1億円以下 |
6万円 |
3万円 |
原則として契約書を2通作成し、それぞれに印紙を貼るため、売主・買主双方が印紙税を負担するのが基本です。ただし、契約当事者の一方が宅地建物取引業者である場合、実務では原本1通のみを作成し、もう一方はコピーで保管することで印紙代を節約するケースもあります。その際は、原本を保管する側(多くは業者側)が印紙税を全額負担するのが一般的な取り扱いです。
参照元:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
譲渡所得税
土地を売却して利益が出た場合、その利益(=譲渡所得)に対して譲渡所得税が課されます。譲渡所得税は売却した年の翌年(2〜3月)に確定申告を行い納付が必要です。税率は土地の所有期間に応じて異なり、5年を境に税率が大きく変わります。
項目 |
長期譲渡所得 |
短期譲渡所得 |
所有期間 |
5年超 |
5年以下 |
税率 |
20.315% (所得税:15.315% 住民税:5%) ※所得税には2.1%の復興特別所得税を含む |
39.63% (所得税:30.63% 住民税:9%) ※所得税には2.1%の復興特別所得税を含む |
例えば、相続後すぐに売却した場合は「短期譲渡所得」扱いとなり、高い税率が適用されます。一方で、3,000万円の特別控除や取得費加算の特例など、節税制度を利用すれば税負担を大きく減らせる可能性もあります。申告前に、税理士や不動産会社に相談しておくと安心です。
土地の売却で押さえておくべき3つの注意点
土地の売却は高額取引であるうえに手続きも複雑なため、事前に押さえておきたい注意点がいくつかあります。特に以下の3点を意識しておくことで、トラブルや損失を未然に防ぎ、安心して売却を進めることができます。
土地の価値に影響するリスク要因と現状を把握する
土地を売却する際には、事前に「買主が懸念しやすいリスク要因」を洗い出しておくことが重要です。例えば以下のようなケースにおいては、購入希望者に不安を与える原因となります。
- 境界線が不明確
- 塀や植木などが隣地に越境している
- 地中に古い基礎や埋設物が残っている
- 接道義務を満たしておらず再建築不可
- 接道している道路が「私道」で通行に制限がある
万が一、引き渡し後にこのような問題が発覚すると「契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)」を問われ、損害賠償や契約解除に発展するリスクもあります。トラブルを防ぐためには、確定測量による境界の明示や、現地の状況確認、必要に応じた専門家(測量士・建築士など)への相談が有効です。
売却価格がローン残債を下回らないようにする
売却予定の土地に住宅ローンや借入金が残っている場合は、売却価格でローンを完済できるかを事前にシミュレーションしておくことが大事です。仮に、査定価格や想定される売却価格がローン残高を下回っていると、不足分を自己資金で補填しなければならず、売却自体が困難になるケースもあります。
このようなリスクを避けるためには、早い段階で金融機関と打ち合わせを行い、残債の確認や抵当権抹消の条件などを把握しておくことが大切です。状況によっては、ローンの繰り上げ返済や借り換えによって負担を軽減できる場合もあります。
査定価格を鵜呑みにせず適正価格を見定める
不動産会社から提示される査定価格は、あくまで「売れる可能性がある目安の価格」であり、実際に売却できる金額とは限りません。なかには、高めの査定を提示して専任契約を取りに来る会社もありますが、そのままの金額で売り出すと「高すぎて売れない」状態に陥ることもあります。査定額は参考情報として受け止めつつ、客観的な相場確認が不可欠です。
適正な売却価格を見定めるには、国土交通省の「不動産取引価格情報検索」や、国税庁の「路線価図」など、公的な情報を活用して周辺の取引事例と比較するのが効果的です。また、査定時には「この価格の根拠は何か」「売却までにどれくらいかかりそうか」など、不動産会社の担当者に具体的な説明を求めることも重要と言えるでしょう。
参照元:不動産情報ライブラリ|国土交通省
参照元:路線価図・評価倍率表|国税庁
土地売却の際は松屋不動産販売にご相談ください
土地の売却には、境界の確認や相場の把握、税金の知識など専門的な対応が求められる場面が多くあります。このような複雑な手続きを不安や疑問を抱えたまま進めてしまうと、思わぬ損失につながることもあるため注意が必要です。だからこそ、信頼できる地元の不動産会社に相談することが、安心して売却を進めるための第一歩です。
松屋不動産販売株式会社では、地域に根差した豊富な取引実績と相場感をもとに、適正な価格査定と丁寧な売却プランをご提案しています。測量や解体、税務のご相談にもワンストップで対応可能な体制を整えており、初めて土地を売却される方でも安心してお任せいただけます。「不安で何から始めればいいか分からない」という方も、お気軽にご相談ください。
まとめ:土地売却の流れと注意点を理解してスムーズに売却活動を進めよう
土地の売却には事前準備から契約締結、そして税務申告といった複数の手順が発生し、それぞれに専門的な知識や判断が求められます。必要書類や費用、売却時の注意点をしっかり把握しておくことで、無用なトラブルを避け、納得のいく売却を実現することができます。
「何から手をつければいいのか分からない」と不安を感じている方も、信頼できる不動産会社と連携することで、安心して手続きを進められます。無理に一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら、1つずつ着実に進めていくことが成功への近道です。